ランニングを続けていると、多くの方が一度は経験するのが「膝の痛み」です。走り始めた初心者だけでなく、長年走っているベテランランナーでも膝のトラブルに悩まされることは珍しくありません。
膝の痛みにはさまざまな原因があり、痛む場所や痛み方によって対処法が異なります。間違った対処をすると症状が長引くだけでなく、慢性化して走れなくなるリスクもあるため、正しい知識を持っておくことが大切です。
この記事では、ランニングで起こりやすい膝の痛みの種類と原因、予防のためのトレーニング、痛みが出てしまったときのセルフケアについて詳しく解説します。
ランニングで膝が痛くなる主な原因
オーバーユース(使いすぎ)
膝の痛みの最も多い原因は、単純に「走りすぎ」です。ランニングでは着地のたびに体重の約2.5倍の力が地面から足に返ってきて、それが膝にも伝わるとされており(参考:A Contemporary Approach to Patellofemoral Pain in Runners(Sports Health誌))、走行距離や頻度が体の回復能力を超えると、関節周辺の組織に微細な損傷が蓄積して痛みが発生します。
特に、急激に走行距離を増やしたときに起こりやすく、週間走行距離の増加は前週比10%以内に抑えるという目安がよく知られています。ただし、この「10%ルール」に沿って距離を増やしても、ケガの発生率は変わらなかったという研究もあるため、距離の数字だけでなく痛みや疲れの具合も見ながら調整しましょう(参考:Buistら(2008)初心者ランナーの段階的トレーニングとケガの研究(フローニンゲン大学))。
筋力不足
膝関節は筋肉によって支えられており、太ももの前側(大腿四頭筋)、後ろ側(ハムストリングス)、お尻の横(中殿筋)の筋力が不足すると、着地時に膝が不安定になり、特定の部位に負荷が集中します。特に中殿筋の弱さは、走行中に膝が内側に入る「ニーイン」の原因となり、膝周辺の靭帯や腱に過度なストレスがかかります。
ランニングフォームの問題
着地位置が体の重心から大きく前方にある「オーバーストライド」は、膝への衝撃を増大させます。重心の真下に近い位置で着地するフォームを意識することで、膝への負担を軽減できます。また、体が左右に大きく揺れるフォームも膝への負荷を偏らせる原因です。
シューズの問題
クッション性が劣化したシューズや、足の形状に合っていないシューズは膝のトラブルを引き起こします。ミズノは、ランニングシューズの買い替えの目安を走行距離600km程度としています(体重や走り方、練習頻度で変わります)。使い続けるうちにクッション性能は低下していきます(参考:ランニングシューズ寿命の見極め方と最適な替え時(ミズノ公式))。心当たりがある場合は、まず足元をクッション性の高いモデルに見直すところから始めてみてください。

膝の痛みの種類と症状|痛む場所で原因がわかる
膝の外側が痛い:腸脛靭帯炎(ランナー膝)
ランナーに多い膝の痛みのひとつが、膝の外側に出る腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)です。ランナーのケガ2,002件を分析した研究では、膝蓋大腿疼痛症候群に次いで2番目に多いケガでした(参考:A retrospective case-control analysis of 2002 running injuries(Br J Sports Med))。「ランナー膝」とも呼ばれ、太ももの外側を走る腸脛靭帯が、膝の外側の骨(大腿骨外側上顆)と繰り返し擦れることで炎症を起こします。
走り始めて数km経つと膝の外側がズキズキと痛み始め、休むと痛みが引くのが特徴です。下り坂で痛みが強くなる傾向があります。
膝の内側が痛い:鵞足炎(がそくえん)
膝の内側やや下に痛みが出る場合は、鵞足炎が疑われます。太ももの内側から膝の内側にかけて付着する3つの筋肉の腱(縫工筋・薄筋・半腱様筋)が集まる「鵞足」という部分に炎症が起こる疾患です。X脚気味の方や、ニーイン(膝が内側に入る動き)がある方に発症しやすいです。
膝のお皿の下が痛い:膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
膝のお皿(膝蓋骨)の下に痛みが出るのは、膝蓋腱炎の可能性があります。膝蓋腱は大腿四頭筋の力を脛骨に伝える腱で、ランニングの着地衝撃で繰り返し負荷がかかると炎症を起こします。階段の上り下りで痛みが強くなるのが特徴です。
膝のお皿の裏が痛い:膝蓋大腿疼痛症候群
膝のお皿の裏側や周囲にぼんやりとした痛みがある場合は、膝蓋大腿疼痛症候群が考えられます。膝蓋骨が大腿骨の溝の中で正しい位置を保てず、軟骨に負担がかかることで痛みが生じます。長時間座った後に立ち上がったときに痛むのが典型的な症状です。
膝の痛みは「外側」「内側」「お皿の下」「お皿の裏」で原因が異なります。痛む場所を正確に把握することが、適切な対処への第一歩です。自分で判断がつかない場合は、スポーツ整形外科を受診しましょう。
膝の痛みを予防する筋力トレーニング
スクワット
大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋を同時に鍛えられる基本種目です。膝が つま先より前に出すぎないように注意しながら、太ももが床と平行になるまでゆっくり腰を落とします。
- 回数:15回×3セット
- 頻度:週2〜3回
- 注意点:膝がつま先と同じ方向を向くようにする
サイドレッグレイズ(横向き脚上げ)
中殿筋を鍛えるトレーニングです。横向きに寝て、上側の脚をまっすぐ伸ばしたまま天井方向に持ち上げます。中殿筋を鍛えるとニーインを防ぎやすくなると考えられており、ランナーの膝痛予防に役立つことが期待できます。
- 回数:各脚15回×3セット
- 頻度:週3回
- 注意点:骨盤が前後に傾かないように安定させる
自重で楽にこなせるようになったら、太ももにゴムバンドを巻いて負荷を足すと、中殿筋にしっかり効かせやすくなります。
カーフレイズ
ふくらはぎ(下腿三頭筋)を鍛えるトレーニングです。階段の端や段差に足の前半分を乗せ、かかとをゆっくり上げ下げします。ふくらはぎの筋力は着地時の衝撃吸収に関わっており、弱いと膝関節に衝撃が直接伝わりやすくなります。
- 回数:20回×3セット
- 頻度:週3回
- 注意点:反動をつけずにゆっくり行う
シングルレッグデッドリフト
片脚で立ちながら上体を前に倒す動作で、ハムストリングスと臀筋を同時に鍛えられます。ランニングは本質的に片脚ずつの着地動作の繰り返しであるため、片脚でのバランストレーニングは実践的な故障予防につながります。

膝の痛みを予防するストレッチ
腸脛靭帯のストレッチ
立った状態で、痛い方の脚を反対側の脚の後ろにクロスさせ、体を反対側に倒します。太ももの外側に伸びを感じたらその姿勢を30秒キープします。腸脛靭帯の柔軟性を保つことで、ランナー膝の予防につながります。
大腿四頭筋のストレッチ
立った状態で片方の足の甲を同じ側の手でつかみ、かかとをお尻に近づけます。太ももの前側に伸びを感じたら30秒キープします。大腿四頭筋の柔軟性は膝蓋腱炎の予防に重要です。
ふくらはぎのストレッチ
壁に手をついて片方の脚を後ろに引き、かかとを床につけたまま前側の脚に体重を乗せます。ふくらはぎの柔軟性が低いと着地時に足首が十分に機能せず、膝への衝撃が増大するため、入念にストレッチしましょう。
ハムストリングスのストレッチ
床に座って片方の脚を伸ばし、つま先に向かって上体を前に倒します。太ももの裏側に伸びを感じたら30秒キープします。左右それぞれ行いましょう。床に直接座ると硬くて集中しにくいので、マットを1枚敷いておくと毎日の習慣にしやすくなります。
ストレッチは「痛気持ちいい」と感じる程度で止めてください。痛みがある状態で無理に伸ばすと、筋肉や腱を傷める原因になります。ランニング前は動的ストレッチ(脚振りなど)、ランニング後は静的ストレッチが適しています。
痛みが出てしまったときのセルフケア
RICE処置を即座に行う
膝に痛みが出たら、まず「RICE処置」を行いましょう。
- R(Rest・安静):走るのを中止し、膝を休ませる
- I(Ice・冷却):患部に氷嚢やアイスパックを当てて15〜20分冷やす
- C(Compression・圧迫):弾性包帯などで軽く圧迫して腫れを抑える
- E(Elevation・挙上):脚を心臓より高い位置に上げて腫れを軽減する
アイシングは、痛みが出た直後の腫れや痛みをやわらげる目的で行われます。ランニング後に膝に違和感がある場合は、冷やして様子を見るのもひとつの方法です。膝に巻きつけられる形の氷嚢を用意しておくと、氷が落ちずに冷やせます。
完全休養は逆効果になることも
膝が痛いからといって長期間全く動かないでいると、筋力が低下して復帰後に再び痛みが出やすくなります。急性期(強い痛みがある時期)を過ぎたら、痛みの出ない範囲でウォーキングやストレッチを行い、段階的に活動量を戻していくのが回復の近道です。
ランニング再開の目安
歩行時に痛みがなくなり、階段の上り下りが痛みなくできる状態になったら、短い距離からランニングを再開できます。最初は2〜3kmのゆっくりしたジョグから始め、痛みが出なければ徐々に距離を伸ばしていきます。

膝の痛みを防ぐランニングシューズの選び方
クッション性を重視する
膝に不安がある方は、クッション性の高いシューズを選びましょう。厚底のクッションシューズは着地時の衝撃を吸収し、膝への負担を軽減してくれます。各メーカーの「クッション系」カテゴリのシューズが該当します。
足の形状に合ったシューズを選ぶ
足が内側に倒れ込む「オーバープロネーション」の傾向がある方は、安定性を重視した「スタビリティシューズ」がおすすめです。逆に足の外側で着地する「アンダープロネーション(サピネーション)」の方は、クッション性が高く柔軟性のあるシューズが適しています。
自分のプロネーションタイプがわからない場合は、ランニング専門店で足の形状やランニングフォームを計測してもらうと、最適なシューズを提案してもらえます。
クッション系・スタビリティ系など、タイプの違うシューズを比べながら選びたいなら、スーパースポーツゼビオの公式オンラインストアも便利です。ランニングシューズを複数のブランドから横断して探せて、ゼビオグループ各店(一部店舗を除く)で受け取れば金額にかかわらず送料無料になります。配送の場合の送料は550円(税込)で、3,980円(税込)以上なら無料です(沖縄・離島・一部地域を除く)。詳しくは公式サイトで確認できます。

シューズの交換時期を守る
ランニングシューズのクッション性能は走行距離とともに低下していきます。ソールの溝が浅くなったり、ミッドソールのシワが目立つようになったら交換のサインです。走行距離600km程度を目安にシューズを交換すると、クッションがへたったまま走り続けることを避けられます。
よくある質問(Q&A)
Q. 膝が痛いときにサポーターは効果がある?
膝用サポーターは、関節を支えて安定させる補助として使われます。ただし、サポーターはあくまで補助的な役割であり、根本的な原因(筋力不足やフォームの問題)を解決するものではありません。サポーターに頼りすぎると、サポーターなしでは走れなくなるリスクもあるため、筋力トレーニングと併用することが大切です。痛みが続いている場合はまず受診が前提ですが、練習に戻る際の補助として使っている方もいます。
Q. 膝の痛みがあるときに病院に行く目安は?
2週間以上痛みが続く場合、痛みが日常生活に支障をきたす場合、膝に腫れや熱感がある場合、膝がロックされて動かなくなる場合は、早めにスポーツ整形外科を受診してください。レントゲンやMRIで原因を特定し、適切な治療を受けることが回復への近道です。
Q. 膝の痛みがあっても走り続けて大丈夫?
軽い違和感程度であれば、ペースを落としたり距離を短くして様子を見ることは可能です。ただし、走っていて痛みが増すようであれば即座に中止すべきです。「我慢すれば走れる」レベルの痛みは、我慢し続けると慢性化するリスクが高いです。
Q. 路面の硬さは膝への影響がある?
アスファルトやコンクリートなどの硬い路面は膝への衝撃が大きくなります。可能であれば、土や芝生の上を走ることで膝への負担を軽減できます。ただし、不整地は足首をひねるリスクがあるため、平坦な場所を選びましょう。
Q. 体重が重いと膝を痛めやすい?
体重が重いほど着地時の衝撃は大きくなるため、膝への負担は増えます。体重が気になる方は、ウォーキングや水中ウォーキングから始めて、体を慣らしながらランニングに移行すると安心です。
まとめ
ランニングにおける膝の痛みは、適切な予防策を講じることでリスクを下げることが期待できます。最も重要なのは、筋力トレーニングによる膝周辺の筋肉の強化と、走行距離の急激な増加を避けることです。
痛みが出てしまった場合は、まずRICE処置で応急対応を行い、焦らず段階的にランニングへ復帰していきましょう。2週間以上痛みが続く場合は、自己判断せずにスポーツ整形外科を受診することを強く推奨します。
参考サイト:ミズノ ランニング初心者の膝の痛み対処法、オムロン ランニングによる膝の痛みの治療と予防法、アルペン ランニング中の膝痛の原因と対処法



