ビルドアップ走は、ゆっくりのペースから段階的にスピードを上げていくランニングトレーニングです。最初は余裕のあるペースで入り、中盤でレースペースに近づけ、終盤はレースペースよりも速く走り切ります。
この「段階的にペースを上げる」構造のおかげで、1回のトレーニングで持久力とスピード持久力の両方を鍛えられる効率の良い練習法として、多くのランナーに取り入れられています。この記事では、ビルドアップ走の具体的なやり方・ペース配分・効果を詳しく解説します。

ビルドアップ走とは?
ビルドアップ走とは、余裕のあるペースでスタートし、段階的にペースを上げながら走るトレーニングです。英語の「Build Up(積み上げる)」が名前の由来で、スタートからゴールに向かってスピードを「積み上げて」いきます。
ペースの上げ方は「3段階」が基本で、全体の走行距離を3分割し、序盤・中盤・終盤でそれぞれペースを上げていきます。
ペース走との違い
ペース走は最初から最後まで一定のペースで走るのに対し、ビルドアップ走は後半に向けてペースを上げていきます。ペース走がペース維持能力を鍛えるトレーニングなら、ビルドアップ走は疲れた状態からさらにペースを上げる力を鍛えるトレーニングです。
ビルドアップ走で得られる3つの効果
1. スピード持久力の向上
ビルドアップ走の終盤は、体がすでに疲れた状態でペースを上げて走ります。この「疲労した中でのスピード走」が、マラソン後半でもペースを維持する力(スピード持久力)を鍛えてくれます。マラソンで後半に失速しがちなランナーに特に効果的です。
2. 持久力(スタミナ)の強化
序盤から中盤にかけてはレースペースよりゆっくり走るため、LSDやペース走と同様の持久力向上効果が得られます。つまり、1回のトレーニングでスタミナとスピードの両方を養えるのがビルドアップ走の魅力です。
3. レース後半のシミュレーション
マラソンのレースでは、前半を抑えて後半にペースを上げる「ネガティブスプリット」が理想とされます。ビルドアップ走はまさにこのネガティブスプリットの練習になるため、レース戦略のシミュレーションとしても活用できます。
ビルドアップ走は「スタミナ」「スピード持久力」「レースシミュレーション」を1回の練習で得られる、効率の良いトレーニングです。
ビルドアップ走の具体的なやり方
基本の3段階ペース配分
ビルドアップ走のペース配分は以下の3段階が基本です。
- 序盤(全体の1/3):レースペースより30秒〜1分遅いペース
- 中盤(全体の1/3):レースペースと同程度のペース
- 終盤(全体の1/3):レースペースより10〜30秒速いペース
この秒単位のペース配分を体感だけでこなすのは難しく、1kmごとのラップが自動で分かるGPSウォッチを使っているランナーが多い練習です。
目標タイム別の具体的なペース例
サブ4(フルマラソン4時間)を目指す場合(レースペース約5:40/km)
- 序盤:6分10秒〜6分30秒/km
- 中盤:5分40秒〜5分50秒/km
- 終盤:5分10秒〜5分30秒/km
サブ3.5(フルマラソン3時間30分)を目指す場合(レースペース約5:00/km)
- 序盤:5分30秒〜5分40秒/km
- 中盤:5分00秒〜5分10秒/km
- 終盤:4分40秒〜4分50秒/km
距離の目安
- 初心者:5〜8km
- 中級者:10〜15km
- 上級者:15〜20km
実施手順
1. ウォーミングアップ:10〜15分のゆっくりジョグ
2. 序盤:余裕のあるペースで走り出す(体を温める感覚)
3. 中盤:自然とペースが上がる感覚で、レースペースに近づける
4. 終盤:意識してペースを上げ、最後の1〜2kmは気持ちよく追い込む
5. クールダウン:10分程度のゆっくりジョグ+ストレッチ

ビルドアップ走の頻度と練習計画への組み込み方
ビルドアップ走は週1回、ポイント練習として取り入れるのが一般的です。ペース走やインターバル走と交互に行うと、バランスの良いトレーニング計画になります。
週間スケジュールの例:
- 月曜:休養
- 火曜:ジョグ(30〜40分)
- 水曜:ビルドアップ走(10〜15km)
- 木曜:休養またはウォーキング
- 金曜:ジョグ(30〜40分)
- 土曜:LSD(90〜120分)
- 日曜:休養
ビルドアップ走は後半にスピードを上げるため、体への負荷が高くなります。翌日は休養日にするか、軽いジョグにとどめましょう。
負荷の高い練習の後は、脚のケアに時間を使うランナーが多くなります。自宅で太ももやふくらはぎをほぐす道具として、フォームローラーを1本置いておくと習慣にしやすくなります。
ビルドアップ走で気をつけるべきポイント
ビルドアップ走で効果を出すために、以下の点に注意してください。
- 序盤のペースを上げすぎない(最初から速く走ると後半で失速する)
- ペースの切り替えは「急に上げる」のではなく「自然に上がる」イメージで
- 終盤は全力疾走ではなく「気持ちよくスピードに乗る」程度で十分
- 体調が悪い日は無理にペースを上げず、ジョグに切り替える
ビルドアップ走で特に多い失敗は「序盤を速く走りすぎて、終盤で上げられなくなる」パターンです。序盤は「遅すぎる」と思うくらいのペースで入り、後半に余裕を残しておくのが成功の秘訣です。
ビルドアップ走のバリエーション
距離短め・ペースアップ幅大きめ(スピード重視型)
5kmのビルドアップ走で、1kmごとに10秒ずつペースを上げていく方法です。スピード持久力を集中的に鍛えたいときに適しています。ラストの1kmは全力に近いペースで追い込みます。
距離長め・ペースアップ幅小さめ(持久力重視型)
20kmのビルドアップ走で、5kmごとに20秒ずつペースを上げていく方法です。マラソンに向けたスタミナ強化に効果的で、後半の粘りを養います。
フリービルドアップ
ペースを厳密に決めず、体の感覚に任せて自然とペースが上がっていくように走る方法です。リラックスして走りたい日や、レースペースが定まっていない初心者におすすめです。

よくある質問(Q&A)
Q. ビルドアップ走は初心者でもできますか?
30分以上連続して走れるレベルになったら挑戦してみましょう。最初はフリービルドアップで「自然にペースが上がる感覚」をつかむのがおすすめです。厳密なペース管理は慣れてからで十分です。
Q. ビルドアップ走のペースはどうやって決めればいいですか?
レースの目標ペースを基準にします。序盤はレースペースより30秒〜1分遅く、終盤はレースペースより10〜30秒速く設定するのが一般的です。まだレースに出たことがない方は、今の自分が「きつくなく走れるペース」を序盤のペースにしましょう。
Q. ビルドアップ走とペース走、どちらを優先すべきですか?
どちらも大切なトレーニングです。週1回のポイント練習として交互に行うのがおすすめです。ペース走は「一定ペースを維持する力」、ビルドアップ走は「後半にペースを上げる力」を鍛えるので、両方やることでバランスの良い走力が身につきます。
まとめ
ビルドアップ走は、ゆっくりのペースから段階的にスピードを上げていくトレーニングで、持久力とスピード持久力を同時に鍛えられる効率の良い練習法です。
3段階のペース配分(序盤ゆっくり→中盤レースペース→終盤速め)を基本に、週1回取り入れましょう。序盤を飛ばしすぎず、後半に自然とペースが上がる感覚をつかむのが成功のコツです。ペース走やLSDと組み合わせて、マラソンに向けた総合的な走力を高めていきましょう。
参考リンク:

