ランニング中の水分補給、きちんとできていますか。「喉が渇いてから飲めばいい」と思っている方もいるかもしれませんが、実は喉の渇きを感じた時点で、すでに体内の水分は不足している状態です。
適切な水分補給はパフォーマンスの維持だけでなく、熱中症や脱水症状の予防にも直結します。この記事では、ランニング時の正しい水分補給のタイミング、量、飲み物の種類について詳しく解説します。

なぜランニング中の水分補給が重要なのか
パフォーマンスへの影響
体重の2%以上の水分が発汗で失われると、持久的なパフォーマンスが低下すると言われています(スプリントのパフォーマンスは3%以上で低下するとされています)。体重60kgの方であれば、1.2kgの水分損失が目安になります(参考:国立スポーツ科学センター「暑熱環境下における水分補給」)。
熱中症と脱水症状のリスク
脱水が進むと、体温調節機能が低下し、熱中症のリスクが高まります。めまい、頭痛、吐き気などの症状が出た場合は、すぐにランニングを中止して水分補給と休息を取ることが大切です。
筋肉のけいれんとの関係
発汗によりナトリウムやカリウムなどの電解質が失われると、筋肉のけいれん(つり)が起きやすくなります。水分だけでなく、電解質の補給も合わせて行うことが重要です。
ランニング前の水分補給
走る前は、コップ1杯程度の水分を少しずつ摂っておきましょう。直前にがぶ飲みすると、お腹がチャポチャポして走りにくくなるため、少しずつ飲むのがコツです。
米国スポーツ医学会(ACSM)の指針では、運動の4時間ほど前から体重1kgあたり5〜7mlを目安にゆっくり飲み、尿が出ない・色が濃い場合は、運動の2時間ほど前に体重1kgあたり3〜5mlを追加するとしています(参考:ACSM「Exercise and Fluid Replacement」(2007))。
ランニング中の水分補給のタイミングと量

基本的な目安
- 時間を決めて、少量ずつこまめに摂取
- マラソンでは1時間あたり400〜800mlがひとつの目安(体格・ペース・気温で変動。ACSMの指針より)
- 一度にたくさん飲まず、こまめに飲む
- 運動前後の体重減少が2%以内に収まるように水分を摂る
発汗量の測り方
自分の発汗量を知るには、ランニング前後の体重差を測るのが簡便な方法です。
「ランニング前の体重 − ランニング後の体重 + 摂取した水分量 = 発汗量」で計算できます。運動による体重減少が2%を超えないように補給量を調整しましょう(参考:日本スポーツ協会「熱中症予防5ヶ条」)。
100g単位まで表示できる体重計があると、走行前後の差が読み取りやすくなります。すでに持っている方は、表示単位を確認してみてください。

ランニング後の水分補給

ランニング後は、失われた水分を速やかに補給することが大切です。ACSMの指針では、すばやく回復させたい場合は減った体重1kgあたり約1.5Lの水分(電解質を含むもの)を目安に補給するとしています(参考:ACSM「Exercise and Fluid Replacement」(2007))。
ランニング後は水に加えて、電解質(ナトリウム、カリウム)を含む飲み物を摂ることで、体内の水分バランスをより効率的に回復させることができます。
ランニング時に適した飲み物の種類
水
30分以内の短時間ランニングであれば、水で十分です。入手しやすく、コストもかかりません。
スポーツドリンク
30分以上のランニングや、気温が高い環境でのランニングでは、電解質(ナトリウム・カリウム)と糖質を含むスポーツドリンクが適しています。発汗で失われた電解質を補給し、糖質がエネルギー補給にもなります。
毎回ペットボトルで買うと荷物もコストもかさむので、粉末タイプを常備して必要な分だけ作るという方法もあります。
経口補水液
発汗量が多いときや、脱水症状の初期段階では、スポーツドリンクよりも電解質濃度が高い経口補水液が適しています。ただし、予防的に普段から飲むのではなく、大量発汗時に限定して利用するのがおすすめです。
麦茶
カフェインを含まず、ミネラルが含まれている麦茶も、日常的なランニング時の水分補給に適しています。
- カフェイン入り飲料:ACSMの指針では、カフェインの摂取で尿の量が大きく変わることはないとされていますが、走る前後の水分補給は水やスポーツドリンクを中心にしましょう
- 炭酸飲料:お腹が張りやすく、ランニング中には適していません
- エナジードリンク:カフェインと糖分が多く、ランニング中の水分補給の飲み物には向きません
季節別の水分補給のポイント

夏場の水分補給
夏場は発汗量が増えるため、通常よりもこまめな水分補給が重要です。気温が高い日は、いつもより間隔を詰めて少量ずつ飲むようにしましょう。また、電解質タブレットを水に溶かして飲むのも効果的です。
そのまま口に入れられる塩分タブレットなら、ポーチに数粒入れておくだけで済むので夏場の携行品に向いています。
冬場の水分補給
冬場は喉の渇きを感じにくくなりますが、寒い環境でも発汗は起こっています。意識的に水分を摂るようにしましょう。温かい飲み物を事前に用意しておくのも良い方法です。
ランニングの距離別の水分補給戦略
5km以下のジョギング
短い距離のジョギングでは、走る前にコップ1杯の水を飲んでおけば、走行中に水分を持ち運ぶ必要はほとんどありません。ただし、夏場の高温多湿な環境では距離に関わらず水分の準備をしておくと安心です。
5〜10kmのランニング
この距離帯では、気温や湿度によって水分補給の必要性が変わります。涼しい季節であれば走る前の水分摂取だけで十分ですが、夏場はハンドボトルや途中の自動販売機・水飲み場を活用して補給するのがおすすめです。
10km以上のロングラン
10km以上走る場合は、水分を携帯するか給水ポイントを確保した上で走りましょう。ウエストポーチやハイドレーションベストを活用し、こまめに少量ずつ補給するのが基本です。長時間のランニングでは水だけでなく、電解質も補えるスポーツドリンクを併用するとよいでしょう。
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水分の摂りすぎにも注意「低ナトリウム血症」
水分補給は大切ですが、水の飲みすぎにも注意が必要です。一度に大量の水を飲むと、血中のナトリウム濃度が薄まり「低ナトリウム血症(水中毒)」を引き起こす危険性があります。
症状としては、頭痛、吐き気、意識障害などがあり、重症化すると命に関わることもあります。「こまめに少量ずつ」を心がけ、一度に大量に飲むことは避けましょう。


ランニングの水分補給に関するQ&A
Q. ジョギング30分程度でも水分補給は必要ですか?
30分程度の軽いジョギングであれば、走る前にコップ1杯の水を飲んでおけば、走行中の水分補給は不要な場合が多いです。ただし、夏場や湿度の高い日は30分でもこまめに水分を摂ることをおすすめします。
Q. 水分補給のためにコースを中断してもいいですか?
立ち止まって水分を摂ることは全く問題ありません。無理に走りながら飲もうとしてむせたり、十分な量を摂れなかったりするくらいなら、一度止まって落ち着いて飲むほうが効果的です。
Q. ランニング中に水を持ち運ぶ方法は?
ハンドボトル、ウエストポーチ、ランニングベスト(ハイドレーションベスト)などの方法があります。距離や好みに応じて選びましょう。近場のジョギングなら自動販売機や公園の水飲み場を活用するのも一つの方法です。
Q. スポーツドリンクは薄めて飲んだほうがいいですか?
市販のスポーツドリンクは、そのまま飲めるように設計されています。スポーツドリンクを薄めて飲むと、適量の電解質が補えない可能性があるとされているため、基本はそのまま飲みましょう(参考:国立スポーツ科学センター「暑熱環境下における水分補給」)。
Q. 水分補給と胃のトラブルを防ぐにはどうすればいいですか?
一度に大量の水を飲むと胃が重くなり、横腹の痛みや吐き気の原因になることがあります。1回あたりの量を少なめに抑え、こまめに摂取する習慣を身につけましょう。走る直前の大量の水分摂取も避けるのがポイントです。


まとめ
ランニング中の水分補給は、パフォーマンス維持と安全のために欠かせません。ランニング前にコップ1杯程度、走行中はこまめに少量ずつ、ランニング後は減った体重を目安に、運動前後の体重減少が2%を超えないよう水分を補給しましょう。
30分以上走る場合は、電解質を含むスポーツドリンクを活用するのが効果的です。「こまめに少量ずつ」を基本に、自分の発汗量に合った水分補給の習慣を身につけてください。
参考:ランニング時における適切な水分補給(アルペングループ) / ランナーに必要な水分量(Nike) / マラソン・ランニング中の水分補給6ヶ条(アストリション)



